チョコレートブラウニー
社会人時代はずっと外資系にいたため、義理チョコを配るという悪習(あえて言う)に染まらずに済んだ。ありがたいことに、上司の皆様はいい感じに海外に染まっていて、ちょっといいところでランチをおごってくださったり、薔薇の花を1輪買ってきてくださったりと、社会に出てからのバレンタインデーは「プレゼントをもらう日」だった。
中でも忘れられないのが、ヒデキ部長だ。
最後に勤めた会社のヒデキ部長が、バレンタインデーには部下全員にチョコレートブラウニーを焼いて振る舞ってくれるという噂は聞いていた。噂どおり、退職するまでの3年間、ヒデキ部長の部下だったわたしもいただいた。
20人ほどの部下に配るのだから、結構大変だったと思う。家族を動員したのかもしれない。でも、ヒデキ部長は毎年必ず自作のブラウニーを焼くのだ。しかも、おいしい。
3時になると、みんなで給湯室に並んで自分の分のお茶を用意し、ヒデキ部長からいただいたブラウニーにかぶりつく。
ああ、今年もいいバレンタインデーだねぇと幸せな気持ちになり、みんなでヒデキ部長にお礼を言う。
息子さんが大好きで、中学受験の日も、合格発表の日も、卒業式も、入学式も、お休みを取って息子さんに付き添ったヒデキ部長。海外出張が多くて息子と話す時間が作れないから、息子の登校に合わせて早めに家を出て、電車の中で話すんだ――と、照れくさそうに話してくれたヒデキ部長。
バレンタインデーというと、ついコンビニでチョコレートブラウニーを買ってしまうのには、こんな思い出があるからだ。
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